《成功した時こそ終わりを慎む》
三月のテーマ 謙虚に生きる 今週の倫理866号
日本武尊(ヤマトタケル)の
伝説に、次のようなエピソードがあります。
東の神々を平定するよう命じられた日本武尊は、伊勢に立ち寄り、
叔母ヤマトヒメより神剣「草薙の剣」等を拝受し、遠征に出かけた。
東方の国々の神を平定し、尾張に戻った日本武尊は、己の強さを誇示する。
「伊吹山の神は素手で討ち取る」と草薙の剣を妻に預け、伊吹山に向かった。
ところが道中、毒気にやられ、三重の地にて命を失うこととなる――。
日本武尊は、神威の象徴である剣を携行して、神の加護を受け東征し、
成果を収めることができました。
しかし、そのことを忘れ、己の力を誇示したい欲望から、
結果として、命を落とすことになりました。
数多くの解釈がある伝説ですが、この話から、
今も昔も人の心は変わらない面があることを教えられます。
私たちは、先祖や両親から徳を受け、周囲から様々な支援をいただいていながら、
成功するとつい自分の力のように勘違いしてしまいます。
感謝の心を忘れ、己の我を通すようになりがちです。
人間力を向上させていく要素はいくつもありますが、
中でも「謙虚さ」は不可欠な態度として挙げられるでしょう。
いかに謙虚な心を保っていけるかは、人間にとって、永遠の課題かもしれません。
*「謙虚」という言葉を辞書で引くと、「控えめでつつましやかなさま。
自分の能力・地位などにおごることなく、素直な態度で人に接するさま」
(『大辞林』)とあります。
また、「謙」という字には、「つつしむ、うやまう」という意があります
(『字通』白川静)。
この「慎む(つつしむ)」ということは、倫理実践の心得でもあります。
倫理運動の創始者・丸山敏雄は、実践における十の要諦として、
その最後に「慎終」を置いています。「終わりを慎む」ことが、
実践の基本であり、成功の要件であるというのです。
物事がうまくいったり、目的や目標を達成すると、
人は得てして気を緩めてしまいがちです。
しかし、本当はまだ完了してはいないのです。
慎終とは、後始末であり、「最後に立派な終止符をポンと打つこと」です。
整理整頓をする、丁寧に清掃をする、使った道具の手入れをし、機械に油をさす、
パソコンのデータを整理する、会計の収支を明朗にして、反省点があればまとめておく、
お世話になった方へ連絡を兼ねて礼状を書く、挨拶回りをする、
神仏に祈願したなら謹んで奉告する――など、さまざまな後始末があります。
仕事が終わった後、成功した後こそ心を緩めず、感謝を込めて後始末を行ない、
物事にけじめをつけていきましょう。
特に、リーダーから率先垂範して後始末を行なうことから、
職場環境にメリハリが生まれ、次への飛躍へとつながっていくのです。
慎んで終わる「慎終」の実践を積み重ねて、
謙虚な心を日々深めていきたいものです。
三月のテーマ 謙虚に生きる 今週の倫理866号
日本武尊(ヤマトタケル)の
伝説に、次のようなエピソードがあります。
東の神々を平定するよう命じられた日本武尊は、伊勢に立ち寄り、
叔母ヤマトヒメより神剣「草薙の剣」等を拝受し、遠征に出かけた。
東方の国々の神を平定し、尾張に戻った日本武尊は、己の強さを誇示する。
「伊吹山の神は素手で討ち取る」と草薙の剣を妻に預け、伊吹山に向かった。
ところが道中、毒気にやられ、三重の地にて命を失うこととなる――。
日本武尊は、神威の象徴である剣を携行して、神の加護を受け東征し、
成果を収めることができました。
しかし、そのことを忘れ、己の力を誇示したい欲望から、
結果として、命を落とすことになりました。
数多くの解釈がある伝説ですが、この話から、
今も昔も人の心は変わらない面があることを教えられます。
私たちは、先祖や両親から徳を受け、周囲から様々な支援をいただいていながら、
成功するとつい自分の力のように勘違いしてしまいます。
感謝の心を忘れ、己の我を通すようになりがちです。
人間力を向上させていく要素はいくつもありますが、
中でも「謙虚さ」は不可欠な態度として挙げられるでしょう。
いかに謙虚な心を保っていけるかは、人間にとって、永遠の課題かもしれません。
*「謙虚」という言葉を辞書で引くと、「控えめでつつましやかなさま。
自分の能力・地位などにおごることなく、素直な態度で人に接するさま」
(『大辞林』)とあります。
また、「謙」という字には、「つつしむ、うやまう」という意があります
(『字通』白川静)。
この「慎む(つつしむ)」ということは、倫理実践の心得でもあります。
倫理運動の創始者・丸山敏雄は、実践における十の要諦として、
その最後に「慎終」を置いています。「終わりを慎む」ことが、
実践の基本であり、成功の要件であるというのです。
物事がうまくいったり、目的や目標を達成すると、
人は得てして気を緩めてしまいがちです。
しかし、本当はまだ完了してはいないのです。
慎終とは、後始末であり、「最後に立派な終止符をポンと打つこと」です。
整理整頓をする、丁寧に清掃をする、使った道具の手入れをし、機械に油をさす、
パソコンのデータを整理する、会計の収支を明朗にして、反省点があればまとめておく、
お世話になった方へ連絡を兼ねて礼状を書く、挨拶回りをする、
神仏に祈願したなら謹んで奉告する――など、さまざまな後始末があります。
仕事が終わった後、成功した後こそ心を緩めず、感謝を込めて後始末を行ない、
物事にけじめをつけていきましょう。
特に、リーダーから率先垂範して後始末を行なうことから、
職場環境にメリハリが生まれ、次への飛躍へとつながっていくのです。
慎んで終わる「慎終」の実践を積み重ねて、
謙虚な心を日々深めていきたいものです。