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2014年05月15日

《間に合った父親への手紙》今週の倫理869号

《間に合った父親への手紙》今週の倫理869号

N氏の父親は、戦後の混乱の中、二十代で建設会社を立ち上げました。
ワンマン経営で、家族を省みず、人から何を言われても我が道を突き進んだ父。
N氏は、そのような父に対して、強い憎しみさえ抱いていました。
N氏が中学校三年生の時、母親が置手紙を残して失踪。一年後に離婚調停が成立して、
兄弟も離れ離れになりました。
成人したN氏は、父親の口利きにより、地元のゼネコンで働きます。
父親からのラブコールにより、三十三歳の時に一度、父の会社に戻りました。
しかし、折り合いがつかず、四年後には退職して別会社を創業しました。
〈父親のようなワンマン経営は絶対しない〉という決意で臨んだ独立でしたが、
経営はうまくいきません。
創業九年目で大病を患い、退院すると、四人の社員が次々と退職。
健康には自信があったN氏でしたが、心も身体もボロボロの状態でした。
そのような時に出合ったのが、純粋倫理です。
同業者のK氏の会社を訪問した際、そこで目にした朝礼が、
これまで見たこともない活力溢れる朝礼だったのです。
「これだ。俺の求めていたものはこの朝礼だ」と、N氏は倫理法人会に入会しました。
活力朝礼が浸透していくとともに、職場に少しずつ活気が生まれ、
N氏も倫理の学びを深めていったのです。
〈俺の人生はこれまで父親に振り回され、苦しめられ、悲しい思いばかりだった〉。
長年そんな思いに囚われてきたN氏でしたが、
倫理を学んで、薄皮をはがすようにわだかまりは溶けていきました。
ある時、N氏は富士高原研修所で開催されている「経営者セミナー」に参加しました。
講座の中で、両親へ手紙を書く時間が与えられました。
N氏の胸の奥底からは、父への葛藤とはまったく別の言葉が次々と湧き上がりました。
セミナーから帰宅をすると、父が癌の宣告を受け、余命二カ月であることを知ったのです。妻の提案で、癌に効くといわれる温泉に、両親を連れて出かけました。
夕食のお膳が運ばれた時です。
〈今伝えなければ、こんなチャンスは二度とない〉と、
N氏は勇気を出して手紙を読み上げました。
会社を継げなかったお詫びと、四年間仕事を教えてもらったお礼を告げ、
「親父は俺の恩師で、職親です。心から感謝しています」と言葉に出して伝えたのでした。
父はその言葉に泣き崩れました。
ご馳走がまったく喉を通らないほど泣いて、そのまま二人で温泉に入りました。
生まれて初めて父の背中を流しながら、親子でいろいろな話をしました。
一カ月後、父は安らかに息を引き取り、柩に感謝の手紙を入れて父を見送りました。
あれほど父を嫌っていたのが、最後には、感謝の気持ちで見送ることができたN氏。
何より、直接言葉で思いを伝えられたことで、
父亡き後も、太い絆で結ばれていることを実感しているといいます。
会社は現在好調で、長男も右腕となってN氏を支えています。
posted by いさはやせいかつ   at 09:32 | Comment(0) | 名言・格言
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